Dante98版コープスパーティーとコンテストの関係


Dante98版「コープスパーティー」とは

Dante98版「コープスパーティー」は、ASCII社製 PC98用ゲームコンストラクションツール「RPGツクール Dante98」を用いて、KENIX SOFT(現チームグリグリ)によって作成されたホラーゲームです。

雑誌「Login Sofcom」 コンテストパーク

Dante98版「コープスパーティー」は、ASCII社発行のゲーム雑誌「Login Sofcom」に投稿され、第6号の誌面およびCD-ROMに同梱されて発表されました。

雑誌「Login Sofcom」には「コンテストパーク」という、ユーザーが自作ゲームを作って雑誌に投稿するコンテストコーナーがありました。
編集部はRPGツクールユーザー及び、RPGツクール以外の作品でも自作ゲーム作品を広く募り、ユーザーから投稿されたゲームを雑誌収録して批評、雑誌の読者に公開するというコーナーでした。

Dante98版「コープスパーティー」は、コンテストパークに投稿されて受賞したために誌面掲載・CD収録となった作品です。

Aコン

また、「コンテストパーク」に投稿すると、自動的に「アスキー エンタテインメント ソフトウェア コンテスト(略称:Aコン)」という、コンテストパークよりも大きなコンテストにも自動エントリーされる仕組みでした。
Aコンとは、LoginSofcom以外にもASCII社の発行するの他ゲーム雑誌も巻き込んだ、大規模な投稿コンテストでした。

コープスパーティーは、「Login Sofcom」のコンテストパークで受賞した1996年の翌年、1997年 第2回Aコン のグランプリ3作のうちの1作にも選ばれました。

なので、コープスはコンテストパークとAコンのW受賞をした作品です。

デマについて概要

Dante98版コープスパーティー(Dante98版、PC98版)の最後に用意されている赤い服の少女との戦闘イベント

「あの戦闘イベントは、戦闘を一回でも入れることがコンテストへの投稿の条件だった」
「作者たちは本当は戦闘なんて入れたくなかったけど、投稿条件にあったから仕方なく戦闘を入れた」

という真偽の疑わしい情報が2chで投下されることがままあります。

しかし、
■当時のLogin Sofcom
■Login
■Dante98
■当時のコンテストパークやAコンの投稿条件
■インターネットコンテストパーク

などを閲覧しましたが、「作中一回でも戦闘を入れること」を投稿の条件としている記述私は見つけることができませんでした。

また、当時のソフコンの掲載作・投稿作品には、「ゲームの開始から終了まで戦闘が一切ないDante98作品」も存在します。

なので、2chに投下される「あの戦闘イベントは、戦闘を一回でも入れることがコンテストパークへの投稿の条件だった」という書き込みはデマではないかと思っています。

当時の応募要項を確認する

◆当時発行された文献

自分の持っているDante98、Dante98II、Login Sofcom 2号~10号を読みましたが、コンテストパーク・Aコンの投稿規約の中に、「Dante98作品はゲーム中に一度でも戦闘を入れること」などと規定する文章はありませんでした。

◆当時より少し後のインターネット

インターネットコンテストパーク、
Aコンのサイト
の投稿規約の中に、「Dante98作品はゲーム中に一度でも戦闘を入れること」などと規定する文章はありませんでした。

コープスはネットより前の時代のソフコン投稿作品なので、ネットの投稿規約を見ても意味はないかもしれませんが、参考までにURLを記録しておきたいと思います。

インターネットコンテストパークとは?
http://www.enterbrain.co.jp/digifami/conpark/what.html

(archive) インターネットコンテストパーク 作品応募の方法
http://web.archive.org/web/20010909204202/http://www.enterbrain.co.jp/digifami/conpark/oubo.html

(archive) インターネットコンテストパーク よくある質問&お答え
http://web.archive.org/web/20011118105604/http://www.enterbrain.co.jp/digifami/conpark/qa.html

(archive) アスキー エンタテインメント ソフトウェア コンテスト
http://wayback.archive.org/web/*/http://www.ascii.co.jp/pb/a-con/
http://wayback.archive.org/web/20030301232220/http://www.ascii.co.jp/pb/a-con/

戦闘のないDante98作品

Login Sofcom、Aコン、インターネットコンテストパークに掲載された作品で、「戦闘のないDante98作品」は存在します。

ということは、当時のコンテストに「Dante98作品はゲーム中に一度でも戦闘を入れること」などというそんな規定はなかったはずの証左になると思います。
もしそんな規約があるのであれば、これら作品は掲載されなかったはずですから。

【恋に落ちたら…… ~If I fell~】
SOFCOM4号収録作品。
学園恋愛ものです。
主人公(高校生男子)が学園生活中接触する二人の女の子のうち
どちらかを選んで告白するものです。
この作品中には戦闘はありません。

編集部作品なので投稿規約は関係ないかもしれませんが…。
しかしコープスよりも前の時点で、編集部は「Dante98を使って戦闘のない作品」をよしとして、むしろ率先して作っていたという証拠がこの作品です。
4号・5号には学園もの企画が多く、Dante98を使って戦闘のある学園作品もありますが、戦闘のない学園作品も掲載されており、こうしたRPGツクールを用いた戦闘なしの作品編集部が禁忌としていたとは考えにくいです。
(もちろん推測の域を超えるものではありませんが)


【ワクワク文化祭】
SOFCOM5号収録作品。
学園恋愛ものです。
マップチップ・キャラチップ・顔グラフィックを、コープスパーティー作者その人・kedwinさんが担当している作品です。
生徒会役員である女主人公・真珠が、校内の行く先々で発生する文化祭準備のための面倒ごとを頼まれたり引き受けたり引き受けなかったりして、同級生との交流を深めつつ、最終的には文化祭当日に行われるねるとんで3人の男子のうち一人に告白する、というゲームです。
このゲームにも、作品中に戦闘はありません。

これも編集部作品なのですが、これもまさしく編集部が率先して「戦闘のないDante98作品」を作っている例です。


【震度8の恐怖】
SOFCOM8号収録作品。
Dante98が使われていますが、マップを自分で歩くゲームではなく
会話を読んで次の行動を はい・いいえ で選択することがプレイヤーのできる行動のすべてです。

大地震発生時にベターな状況を学習しようという趣旨のものです。(SOFCOM8号が発売された年の前年には阪神淡路大震災がありました)

このゲームは完全に選択式ADVとなっているゲームです。
マップを自分で歩くことすらないゲームです。キャラクターチップの表示は32*32を縦に2つ並べた、等身の高い描写方法になっています。
このゲームにも、作品中に戦闘はありません。

こちらのゲームは8号収録ですので、関係ないかもしれませんが…。
しかしコンテストパークは「Dante98作品はゲーム中に一度でも戦闘を入れなければ受賞できない・受領しない」なんてことはなかったはずであるということが明らかです。


【FLORA】
SOFCOM8号収録作品。
こちらはDante98IIが使われています。
このゲームは、Dante98IIの戦闘システムを使っているのではなく、マップチップ・キャラチップ・変数イベントなどを多彩に用いた独自のサイドビュージャンケンバトルを導入しています。
マップ・キャラチップの容量制限が取り払われたDante98IIならではの、とても華のある作品です。
ジャンケンバトルでしたので、このゲームにも、作品中に「Dante98IIの戦闘システムによる戦闘」はありません。

コンテストパークでは、こうした「Danteのシステムによる戦闘がない作品」も受賞できるのだということがわかるかと思います。


結論

ネットで流布される
「Dante98版コープスパーティーの最後の戦闘は、戦闘を一回でも入れることがコンテストへの投稿の条件だったために、無理矢理に不本意に仕方なく入れられた戦闘だった」
という噂は、デマ・虚偽・嘘・偽情報である可能性が極めて高いと思います。

理由は、「当時のDanteやソフコンにはそんな投稿条件どこにも書いてない」からです。

コープスの作者チームグリグリさんによる発言であるならまだしも、2chで「コープスの戦闘はコンテストの条件だったんだよ」と書く人は、いつも必ずソースを提示しません。

「当時のコンテストパーク・Aコンへの投稿規約には、Dante98作品は必ず戦闘を一回以上入れること、とする規約があった」と主張する方は、どうか必ず捏造ではないソースの提示をお願いいたします。

わたしは自分が持っているDante・DanteII・ソフコンから、それに類する文言は見つけられませんでした。
もし本当にそのような規約があったのであれば謝罪します。

この問題の波及

残念なことに、この2chのデマを見た人が伝聞していく事態にもなっているようで、以下のサイトでもこの問題で取り上げた戦闘規約デマが掲載されています。

バトルはラスボスだけというのは、無駄が無くて遊びやすい。
最後に突然バトルになるけど、当時のコンテストで「戦闘がないとダメ」という成約があったんだとか。
引用元: http://browsegames.net/dozin-game/corpseparty.html

現状既に、「98コープスの最後の戦闘はコンテストの規約にあった」と主張する方はソースとして「ファンサイトで見たから」を挙げる人も出て来ているような状態です。

twitterで「コープスパーティー バトル OR 戦闘 規約 OR 無理矢理 OR コンテスト OR ツクール」などで検索すると、やはり「当時のコンテストの応募規約に「戦闘シーンが含まれていること」という規約があったため」などとツイートする人が散見されます。

何度も言いますが

コンテストパークにもAコンにも「戦闘を必須とする」という規約は見つかりません。
あるなら教えてください。ネットの噂じゃなくて。